8耐チームsumisumi、監督ikitakeしゃんの8耐体験記です。
灼熱のロードゴーイング・筑波8耐
ikitakeの『夏の8耐はお祭りだ!』コラム 全5編
【プロローグ】
筑波8耐。
真夏の炎天下、自転車で筑波サーキットを8時間走り続けるレース。
父母はもちろん、周りの友人に出場を告げると
多くの人が驚愕のリアクションを見せ、ほぼ8割以上の人が
「スゴイねえ!!」などと言ってくれます。
しかし同時に、
「バッカじゃないの。」などという、アスリート魂とは無縁の、心の中の侮蔑を感じ取る瞬間でもあります(笑)
そう、我々はその「バッカなこと」に挑み、
ともにゴールへ!の思いをひとつにしながら笑い、泣き、苦しみ、感動し、にわかでもアスリートであることの喜びを共有することに全力を惜しまんとするのでございます。
筑波8耐とはどんなものか。
名前の通り辛くて大変なのか。
8耐の魅力とは?
エピソードは?
などなど・・・ikitake所属チームである
『チームもろっぱや』での筑波8耐出場経験をもとに
ささやかながら、不定期にてなるべく早く、参加申込みまでに全編終了する予定で、あくまで予定で、たぶんダイジョビ、でも仕事が・・・といった塩梅でコラムを書かせていただきとうございます。
どうぞ、お付き合いのほど、ごめんあそばせ。ウフ
【前夜〜スタート編】
んふふ〜〜♪ ルンルン。
自転車、パンク修理セット、ヘルメット、グローブ、食料+クーラーボックス、折りたたみ椅子、折りたたみテーブル、土方シート、着替えに小道具、台車。
んふふ〜〜♪ ルンルン。
前夜の、マイ4駆カー(すでに売却)に積み込む作業は楽しい。
まるでキャンプに行くかのような準備であるが、これも初出場時の苦い経験から我々は学んだのだ。
マイ4駆(シツコイがすでに売却)のルーフキャリアに取り付けられたマウンテンバイクが、毎度の事ながらいかにもレース出ますよ、どうですオイラ、イケてるでしょう風で猛々しく自己陶酔のひとときである。
明け方には「眠ぃ〜よ、オイ」とかほざくメンバーを順次拾い、顔をひっぱたき、筑波サーキットへ。
常磐道谷和原ICを降り、一般道をサーキットに向かうと、日の出とともにアチコチから沸いたように集まる集まる。ホラホラどきなさい、オレっちは毎年8耐出てるんだぞぅ風の、まさしくウン十万、ヘタすると3桁台価格の自転車をこれ見よがしに積んでいるバリバリの自転車屋チーム系の、スポンサーステッカーペタペタ貼ったクルマ。見かけからしてエライ速そうである。
前夜の猛々しいはずだった、ikitake率いるショボイマウンテンバイク(以下MTB)は、やっぱりすみませんオイラたちも端っこで良いので走らせて下さい風のナヨナヨしい見かけに変わり、一瞬にしてモチベーションサゲサゲ↓であった。
8耐は、エントリー受付の朝7時から始まる。
我々は、MTB男女混合クラスにエントリー。
クルマを所定の駐車場に止めると、クーラーBOXなど重たい荷物は台車を使ってピットロードまで押してゆく。駐車場からピットまで結構道のりがあるからだ。そして場内は自転車も押して行かねばならない。
代表者がエントリーを済ませると、いよいよピットへ。
すでに日は昇り、すがすがしい朝はやがてすぐに蒸し暑い、〜灼熱のロードへ〜の序章がこだまする。
我々は、密かに闘志を燃やしていた。。。走ること、ウケること、楽しむこと、完走すること。
ピット裏に陣取り、自転車を配置して着替えて準備を終えると、ウォーミングアップ走行がある。コースを何周か自由に走行しながらコースの状態、ブレーキ、タイヤ、変速機など各パーツの動作点検、計測用センサーチェック、ライダーのポジション、とくに男性はレーパンの股間の収まり具合(笑)などの点検をする。
ウォーミングアップ走行が終わり開会式、セレモニー、レディース&キャンギャルウォッチング。形式通りの催しと目の保養が進むと、
午前11時前、いよいよドキドキワクワク、スタート時刻が迫る。
スタート方式は、変則ル・マン式。
ル・マン式とはかつてフランスの自動車レース、『ル・マン24時間耐久レース』でのスタート方式が由来で、本来はコース片端に競技車を置き、ドライバー(またはライダー)はスタートの合図と同時に対岸から自分の足で駆け寄って乗車し、そのままスタートを切るのだ。つまり乗車前にコース幅ぶんだけ“かけっこ”をするのである。
ところが筑波8耐の場合は、小さな自転車であってもおよそ300台出場と多いことからコース両端に競技車を並べざるを得ず、対岸から駆け寄ってのスタートが出来ない。なので乗車姿勢からのスタートとなるため、変則ル・マン式と呼ばれる。
スタートの号砲がなると、メインスタンド前コース両端から300台全車一斉が歓声ともにコースへなだれ込む様は迫力満点だが、この競技唯一にして、もっとも危険なシーンでもある。
ベテランからビギナー、あらゆるレベルの自転車乗り、ロードもMTBもママチャリもが一斉にスタートするので混乱し、直後は接触転倒が多いからだ。そのため、転倒車続出すると再スタートとなる時もある。
しかしチームメンバーはスタートライダーに付き添いが出来る。スタート時のコース上は多くの人でごった返すのだが、メンバーに見守られてスタートできることは力強い限りである。
スタート1分前。
スターティングライダーは、ikitake。
11時、日差しは既に真夏のそれで、かなり暑い。30秒前。
「iki、ガンバレよっ!」
「コケるなよっ!」
「3週でピットインだからな!(笑)」
自転車の後ろにさがったメンバーの声。声の度にうなずく。鼓動が早くなる。血がたぎる。10カウントダウン。
3、2、1、、、スタート!!!!
全車一斉にコースへなだれ込む。緊張を解き放つ。ペダル。踏み込む。前へ。前へ。ぶつかる。避ける。歓声。
8時間後のゴールへ。
歓声の中、万感の思いを込めてスタンディング姿勢で加速し、やや上り気味の第1コーナーへ駆け込んでゆく。
暑く長いドラマの、8時間耐久の始まりである。
そしてこのレース、後にikitakeが生死を彷徨うことになろうとは思いも寄らなかった。。。
【走行編 〜ikitake生死を彷徨う!〜】
シャカシャカシャカシャカシャカ!
筑波サーキットの1周は約2km(2,045m)と短い。
緩やかなアップダウンが少しあるが、ほぼフラットなコースでトップグループなら3分を切って1周してしまう。
8時間を1周でも多く周回するが勝ち、という耐久レースは、チーム各員がスプリントを継続させるスプリントレースの集合体でもある。全力で周回し、次のライダーへ交代したあとは、またやってくる自分の順番までに体力を回復させないといけない。駅伝は一度きりの走りでも、8耐は何度も自分の番がやってくる。そして時間を重ねるごとに夏の猛暑が疲れとなって堪えてくるのだ。
走行中は結構忙しい。
追い越し、追い越され、右へ左へとカーブを通過し、アップダウンではペダリングの効率を維持するために細かなギアチェンジも繰り返す。アップにさしかかり、ギアチェンジが面倒くさいと言って重たいペダルを力任せに踏み込んでいると後半にバテるので、長い目でみるとギアチェンジを繰り返し効率の良いクランク回転数(ペダル回転)を維持している方が良い。
スタート後、1周もすると速いエキスパートから遅いビギナーまでかなりバラけてくる。するとコーナーの混雑度も低くなるので安全に周回することができる。彩りのサイクルジャージ、バリエーション溢れる数々の自転車、仮装しているライダーなどを視野にとらえながら風を切って走っていると結構楽しい。ジーパン、トレーナーで走る女子もいた。8耐といってもお祭り色の強い、気負いのないレースである。
そして数周もすると…。
ものすごい速いトップ集団が周回遅れをパスしに襲いかかってくる! いや襲いはしないが、抜きにかかってくるのだ。我々は前後サスペンション付きの重たいMTB。トップ集団は何十万もする超軽のロード。カテゴリが違うとはいえ、速度の差はいかんともしがたく、ものの数周でトップに抜かれてしまうのである。
その抜かれザマがまた、スゴイ。
自分の後方からシャーーーーーーとチェーンが鳴る音が聞こえてきたかと思うと、ドップラー効果で瞬く間に音が大きくなり、一種の恐怖を感じたかと思いきや、
グォーーーーーーーーー!シャカシャカシャカ!
トップ集団のドラフティングである。ドラフティングとは前を走るライダーの真後ろにピタッと追従して風よけ走行をすることで空気抵抗を減らし、追従するライダーは疲労を防ぐことができる。このタイヤがぶつかりそうなくらいに、ピターーーっと15台ほどくっついた先頭集団が鮮やかに抜いてゆくのだ。見ていてホレボレするほど、まるで電車のようにキレーーーに1列を作っている。周回遅れがヨタヨタ走っていると危険防止のためにトップライダーが追い抜く前に「ファーーー!」とか「抜きまーーーす!」とか「どけ!ウスノロ!」などと叫ぶこともあるのでよけいにビビることもあるのだが、とにかく速い。ちなみにトライアスロンなどではドラフティング走行は禁止されていることが多い。
周回コースなので華麗なトップ集団を間近に見ることができるのも8耐の楽しみである。
交代、周回を重ねるごとに真夏の炎天が堪えてくる。
昼下がり〜15時ぐらいまでが、一番キツく、トップライダーのペースもにわかに落ち始める時である。晴天で気温が30度としても、アスファルトの照り返しで実際には気温+アルファだろう。しかしながら走行中は風を切って走っているのでそれほど暑さは感じないし、風が吹けば涼しいが、風が吹くと抵抗でスピードが落ちて体力もかなり消耗する。
炎天下、悲劇は突然襲ってきた。
ikitakeは快調に周回と交代を重ねて2回目のライドを終えた。ところが降車直後、突然目が見えなくなった。目は見開いているのに視界が白くぼやけ、濃霧がかかったようになる。目まいか。手足がわずかに痺れ、呼吸が荒くなる。心臓の鼓動が早い。意識が遠のく。汗が噴き出る。いや、冷や汗か。吐き気がするほど、気持ち悪くなる。とうていまともに歩けずピットでフラついた。
熱中症!?
遠のく意識の中でその言葉が浮かんだ。ヤバイと思った。しかしメンバーに伝えようにも荒い呼吸で言葉が出てこない。視界が白い。数メートル先しか見えない。手足の痺れ。吐き気。荒い呼吸。首から上が熱い。反射的に日陰を求めて歩いていった。痺れが大きくなる。ピットの日陰。身体を支えきれず、ピットの壁に立ってもたれかかる。呼吸が苦しい。だるくなる。死ぬのか?という恐怖。オレ何していたんだっけ。覚えているのはそこまでだった。
ふいに顔に衝撃が走った。
気がつくとピットロードにうつ伏せになっていた。何故うつ伏せなのかよく判らなかった。意識を失ったのか。手足に打撲系痛みの感覚がある。指を動かす。動く。手。足。動いた。アゴも痛かった。ヘルメットは被っていた。目が少し見えてきた。まわりのライダーが怪訝そうに覗きこむ。ぶっ倒れたようだ。倒れた時に手足、顔をぶつけたらしい。自分が無様に倒れていることをハッキリ認識した。意識が戻る。大丈夫か?と見知らぬライダーに抱きかかえられ、ピットの椅子に座らせてくれた。吐き気。痺れは残っている。椅子に座りしばらくグッタリしていると視界が少しクリアになった。コースでは多くの自転車が走り回っていた。吐き気が少し治まると、歩いて仲間のところに戻った。足取りは重たかったがシッカリしていた。気持ち悪いからチョット休む。仲間にそう言って少し水分を補給したが飲み込めずにすぐ吐き出した。大丈夫か。仲間の声。大丈夫だ。額と後頭部、首にアイスノンを当てて寝そべった。少しずつ水を飲んだ。30分もするとラクになってきた。走れるか。ムリするなよ。休んでいる間、自分のライドが2回ほど回ってきたが変わってもらった。身体と相談。手足に打撲痛み。吐き気、痺れはなくなった。視界も元通り。大丈夫だ。
軽い熱中症。炎天下、水分はたっぷり摂っていたが、激しい動きからライダー交代によって急に動きを止めた反動で患ったようだ。熱中症は死に至ることもある。前日にろくに睡眠をとらずに準備していたことが原因かもしれなかった。。。
にわかに生死をさまよったが、2回休んで復帰した。その後は何事もなかった。16時過ぎて夕方になると西日は強いがいくらか気温も下がって心地よくなる。しかし風が出てきて抵抗が強くなり、ダラダラと周回を続ける。相変わらずトップグループは速い。
コースの所々でカメラマンが構えている。おそらくオールスポーツだろう。ピースサインをする余裕すら出てきた。後になって判ったがikitakeの写真は1枚もなかった。。。あのピースはどこいったんだろう。
あの時、意識を失ったままだったらどうなっていたのだろうか。
倒れた時にぶつけた手足の痛みを引きずりながら、今生きていることに感謝していた。
照り返しで眩しいアスファルトを眺めてひたむきに走る。
やがて、交代時間が迫ってきた。
【ライダー交代&交代待ち編 〜交代がいない!〜】
「なんでこんなクソ暑い中、シャカリキにぐるぐる走らなアカンのよ!?」
それが夏の8耐であり、面白さである。
ピットインし、次ライダーへ交代すると、ライドの重責と苦しみから解放される瞬間。
ライダー交代回数は16回以上が規定。
チームで16回以上行えば良いので、1人何回交代あるいは何周で交代しても自由なのだ。また8耐は時間内の周回数を競うので、ライダー本人にではなく、自転車に周回数計測センサーが取り付けられる。計測センサーは1チームに1台で、1チームで数台自転車を持つ場合は、ライダー交代時にセンサーもその自転車に付け替える作業が必要になる。センサーを付け替えるのはピットクルーか、交代待ちで手持ちぶさたのライダーにしてもらうとスムーズだ。
8時間耐久、という名前からするとものすごい過酷なレースのように思われるが、意外にそうでもない。
1チームで最大6名まで編成可能なので、単純に8時間を頭数の6名で割れば、1人あたり80分、つまり1時間強を走れば良いことになる。また8時間のうち最低16回のライダー交代をしないとならないので、単純均等に割って走っても30分弱の走行を16回交代すればいい。すると、1人あたり30分弱の出走を2〜3回すれば良く、順番に回ったとしても自分が走ったあと、次の自分の番までは30分×5名分=2時間半後となり、単純計算上は十分に休憩がとれる。
しかし炎天下のレースである。
真夏の暑い中を、30分もスプリントに近いレーススピードを維持しながら走り続けることは、自転車競技を専門に練習したライダーでないとかなり厳しい。したがって我々のようなヘッポコチームは、ヘタに長く走り続けてペースが落ちるよりも、たとえば15分ぐらいでサッとライダー交代をして小刻みにつなぐ戦法をとったりする。なので交代回数&出走回数も増えてゆくのだ。
ただ、ピットロードは時速15km以下で走行というルールがあるので、ピットインの回数が多くなると減速分がタイムロスになる。
モータースポーツのように、ピットからサインボードを出して交代&ピットイン指示をしたり、無線で交信しているチームもあるようだが、そうでなければその都度出走前に周回数や交代時期の打ち合わせが必要で、チームでラップタイムを計測しながら交代時間の目安を割り出して、次ライダーはタイミングを見計らってスタンバイする。
熱中症から立ち直ったikitakeは、あの悪夢がウソだったかのように快調に周回を重ね、ようやくピットイン周回になった。最終コーナー手前にさしかかると本コースとピットロード入り口の分岐がある。分岐手前で右手を出し、後続のライダーにピットインする意思表示をすると、最終コーナーと並行するようにしてピットロードに入った。減速。ピットが見えてくる。ピットロードは交代待ちのため混雑していて、自分の交代エリアがドコにあるか一見して判らないのだ。ピットにはそれぞれ番号札が設置されており、自分の交代エリアのピット番号を頼りに減速走行で進む。見えてきた。やっと交代だ。しかし、またも悲劇が待っていた。
オカシイ。
自分チームの交代エリアにメンバーが誰もいない。スタンバイしているハズである。
そんなバカな。ピット番号を間違えたか。確認した。合っている。そんなバカな。先の熱中症の後遺症があって幻覚を見ているのか。何があったのか。
誰にも迎えられなかった私は、キョロキョロしながら慌てふためいて自転車を降りてその場に放置し、ピット裏を覗きこんだ。
メンバー全員、ピット裏で寝コケていた。
私は怒り狂った。あまりの怒りに、私はバック転・バック宙を繰り返しながら跳びはね(大ウソ)次ライダーの頭を叩きながら起こし、早く乗れ、バカ!と罵った。
んあ? と寝ぼけた答えが返ってきた。
んあ?じゃねえ!もう交代なんだよ!マジ?もう回ったの?ヤベぇよ。ヤベえよ、じゃねえよ!信じらんねぇ!次オマエだろ、恥かいたじゃねぇかよ!早く行けよ! 悪ぃわりぃ。 オイ、グローブ忘れてるよ! あれ、ドコだっけ? 知らねえよバカ!
罵声が飛び交う中、隣のチームはクスクスと笑いをこらえていた。。。
暑さでへばったのか、交代時間の目安を計るためのラップタイム計測さえも忘れていやがったのである。
交代をしてしまえば、次の出走まで待ち時間となるが、何も知らずにイキオイで行った初出場の時は酷だった。
何しろ、サーキットには屋根のある場所がない。唯一屋根のあるピット(パドック)は原則として次の交代要員、タイム計測などのクルー以外は居てはいけないことになっている。
交代待ち時間中はずっと日光浴しているようなもので、それだけで想像以上に体力を消耗し、まさに「走るも耐久、待つも耐久」である。
クーラーBOXとレジャーシートだけを持って行った初出場時は、待ち時間中も直射日光浴をするハメになり、待っているだけでもかなり疲れ、体力回復どころではなかった。
他のチームは夏用テントや、タープ、パラソル付テーブルなどを持参し、待ち時間中も直射日光を避け、日焼け&体力消耗を防ぐ工夫をしており、その教訓から今回は我々もパラソルテーブルや椅子などを用意し、キャンプさながらの準備となったのだ。
待ち時間中はノンビリしたもので、何をしていても良い。自分の出走までに戻ればサーキット内をウロついても良いし、時折太鼓などの催しも開催されているのでそれを見物しながら、体力回復と必要な水分補給、栄養補給だけは忘れぬようにする。ただ残念なのは売店や出店があまりないことである。
そして。
8耐の、もう一つ楽しみにしているイベントが迫ってきた。“かぶり物”である。
そう、我々はアスリートにして、会場を沸かせるエンターティナーでもあったのだ。
【仮装編 〜目立つが勝ち!〜 ゴールへ】
「なにアレ〜!?」
「わははははは!」
みんな、見る。オイラを見る!!
レースも中盤となり、周回数もバラけてきたところで、我々は計画していた行動に出た。
レッツ!! オワライ!!
苦しい8耐、素人集団の我々ではより多くの周回を争うグループに入れるはずもなく
ハッキリ言って尻から数えたほうが早いんでないの?というぐらいである。
しかし、我々は自らを楽しまなければならない。
そう、それこそがチームの方針であったからなのだ。
「ikitake、イキまーーす!」
「いけーーーーー!」
ライダー交代後、ピットロードをゆっくりと走る。
すぐさま注目を浴びる。
ヘルメットに蛍光ピンクのアフロヘアをかぶり、顔には覆面マスクをつけ、首にはタオルを巻き付け・・・派手な色のTシャツで出走。
かぶり物仮装で走るのだ。格好はふつうだが、首から上が明らかに「ヘンな人」である。
ある者は拍手、ある者は白い目・・・トップを争う集団からは軽蔑され、ギャラリーからは歓迎されムード。
我々のチームの、仮装タイムである。
そのトップバッターがなぜかikitakeであった。
注目を浴びる反面、暑い!! ア・ヅ・イ!!!
なにせ、この炎天下アフロヘアに覆面マスクに首にタオル!!
ピットロードから本コース合流してスピードアップしても首から上に走行風がまったくこない! 息苦しい。覆面で前が見えない。視界が狭い。やっぱこんなことやらなきゃ良かった。なんだかアホみたいじゃ。もうやだ。おっとココでカーブだ、曲がらなきゃ。周りが見えない。視界が狭い。ん、カメラマンだ。オールスポーツかな。とりあえずピース。ちゃんと写ったかな。あづ。早く交代してえ。やっと1周。メインスタンド前だ。ギャラリーがこっちを指さしてる。暑いんだよ、こっちは。とりあえずピース。あづ。
笑いはとれたものの、地獄のような覆面走行。いちおうレースなので全力とはいかないまでもそれなりにスピードを維持すると呼吸が苦しいので、空気、空気をクレ!とばかりに誰もいないところで覆面を顔下半分だけとって口をパクパク。オレは金魚か。
やっと交代。息苦しさから解放され、次のライダーがまた仮装で飛び出して行く。
1人じゃなくチーム全員で仮装バトン。アチコチで拍手されてきたようだ。
仮装大賞はとれなかったが、我々は(にわか)アスリートであり、エンターティナー。
自分が楽しみ、ギャラリーが笑ってくれればそれでいいのだ。
そうして楽しんでいる間に夕方になり、ギラギラした太陽も沈みかけると立派な夕焼け。オレンジ色の地平線に赤紫色の美しい空の下をライダーは走る。自転車の赤色点滅灯が鮮やかに光る、イイ光景だ。風が心地よくなり、昼間の殺人的な暑さが涼しくなりかけた頃。
いよいよ、アンカーライダーへの交代である。
8耐は、ゴール30分前になると交代用ピットロードが閉鎖される。そう、ゴールを割る最終ライダーはラスト30分は交代出来ないのだ。そしてラスト30分は各チームのエースライダーを投入し、ゴールへ向けて驚異的なラストスパートを展開する。ペースメーカーとして並走するオートバイのスピードとまったく遜色ないその走りを目の前にすると、ただただ驚愕である。暗くなった空に赤色点滅灯が美しい。
ピットロードが閉鎖されると、チームクルーやギャラリーはピットロードに繰り出し、本コースを目の前にしながらアンカーライダーを祭りのように応援する。炎天下8時間戦ったチームクルー。
「完走、ゴールへ」
万感の思いを抱き、アンカーライダーにすべてを託しながら声援を贈る。
空が暗くなりすぎて、メインスタンド前を通過するライダーが誰が誰だかわからない。
ある者はヘルメットに蛍光ランプをつけ、ある者は装飾を施し、目立つようにしている。
チェッカーフラッグへののタイムカウント。イヤでも盛り上がる。
チェッカーフラッグが誇らしげに振り下ろされたとき、その思いは最高潮に達する。
来年も、また出たいと思う瞬間でもある。
THE END
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